会報記事


オルタネート・ルート・セオリー


 カレドニアンG・Cや富里G・Cが従来の日本のコースに比べてどこが違うか。今回は少し具体的に述べてみたいと思う。まずゴルフというゲームは、角度のゲームであり、また一方距離のゲームでもある。
 幾何学的に見れば必ずそうなる。距離と角度の矛盾をゴルファーは自分で見つけ、判断する。逆にこの距離と角度をうまく利用し、設計者はゴルファーに対してバラエティに富んだコースをデザインするわけである。ドライブショットの場合も、フェアウェイからグリーンを狙うショットにしても、いずれのケースにも距離と角度の組み合わせを計算し、さまざまなバラエティを提供する。それがコース設計者の腕の見せ所となる。両コースを設計したJ・マイケル・ポーレットが戦略型設計の基本として考えている理論が、実は距離と角度の組み合わせによってコースをデザインする『オルタネート・ルート・セオリー』理論なのである。したがってプレーヤーは、常に頭脳プレーを要求される。角度と飛距離を考え、相互の関連性を有効に発揮できれば、必ず次のショットがより容易になるという褒美が与えられる。しかも戦略型設計の基本はリスクが大きければ大きいほど、そのリスクを冒して成功した場合、その分報酬が大きいということになる。
 たとえばティイング・グランドについて。距離と角度にバラエティを出すためには当然、ティイング・グランドの様相から変えていかなければならない。前後の距離の差をかなり大きくしたホールやサイドや形状をマルチプルにしたティイング・グランドもある。形状以外にも、地形、高低、周囲のハザードなどあらゆる要素を組み合わせ、ティイング・グランドが作られている。そのためにティーの位置によってゴルファーはそれぞれまったく違うアングルを経験することになる。
 日曜日にプレーして、次の日曜日にはまったく違うゴルフを経験するといったことが実際に起こるのが、両コースが従来の日本のコースとは違うところでもある。ちなみに日本のコースはティーに関して、伝統的にチャンピオンティーとかレギュラーティーとか、レディースティーと呼ばれて使用しているが、両コースとも基本的にティーをゴルファーの能力に応じて使い分けている。男性よりもゴルフの上手な女性がレディースティを使わなければいけないのはおかしな話である。性別年齢別でなく、実力に応じたハンディキャップによってティーの使い分けをしてもらいたい。そんな気持ちから呼び名もカラーティーと名付け、ブルーティー、ホワイトティー、ゴールドティーと、ティーごとのコース・レーティングを計算して、公正にプレーしてもらっている。


カレドニアン15番ホール 490ヤード PAR5


 フェアウェイのデザインも、自然をどこまで生かせるか、自然のいろいろなバラエティをいかに取り入れるかに最大の注意を払ってきた。場合によっては非常に平らなものをそのまま生かし、場合によっては右あるいは左に勾配があるものはその勾配を戦略的に取り入れ、窪地はそのまま設計に生かしながら距離と角度の組み合わせを行いデザインしたのである。また一方では、比較的小さないわゆるターゲット・エリアを作ることによって、そのエリアにうまい具合に打った時は、2打目のショットつまりグリーンへ乗せるためのショットがその分だけ簡単になるというような、褒美を与えるデザインもコース内に設計したのである。こういう方法で打った方がやりやすいのではないかとゴルファーに思わせて、実は、そちらのほうがずっと難しかったというような視覚的なだましの手法も取り入れている。これが先ほど述べたスコットランド風な、オルタネート・ルート・セオリーなのである。
 だますかだまされるか。設計者とプレーヤーの勝負である。もちろんコースを征服した時、あなたは一段と技術が向上したことになる。さて、では富里ゴルフ倶楽部の10番ホール、399ヤード、PAR4。左サイドはバンカーと池。設計家ポーレットはこの10番ホールにリンクスの魂と球技の心を再現しようとしている。ある時は穏やかに、ある時は激しい自然のように…。
 カレドニアン・ゴルフクラブの15番ホール、490ヤード、PAR5。グリーン右奥から手前を横切るクリークが戦略の核心である点は共通するが、力ずくで攻めるか、頭脳的に3オンに賭けるか…。あなたならどう攻める。分かったつもりが、だまされたということの無いようにコース攻略法、充分に考えてもらいたい。



(2000年3月 TAM ARTE QUAM MARTE誌 28より抜粋)

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