会報記事


10年ぐらいでは、まだまだ面白さはわからない


 19世紀末にオックスフォードとケンブリッジ大学の若き革新的なアマチュアゴルファー達が、それまでのコース設計の錯誤と矛盾に反駁して生新な設計理論をうちたてました。
 だが彼らが標榜した設計理論は、ことさら革新的で新しいものではなかった。平易に言えばリンクスの再発見でした。というのも、当時は無定見なプロ達によって内陸コースはリンクスの皮相的な模倣の結果、森林を切り開いた無味単調な地形に、やたらと多くのバンカーを配し、ただ難しくありさえすればよいといった設計が多かったからです。
 これらに対して若きゴルファーたちは[リンクスとは、複雑な表相のなかにもプレーヤーの技術と判断力と自己評価によって、上手なものにも未熟なものにも公平にそれぞれの攻撃ルートが与えられ、そのルートを誤ったものだけが罰を受ける]という考えをうちだしたのです。
 後年、マッケンジー博士とボビー・ジョーンズの共同設計で有名なオーガスタナショナルにも、アーメンコーナーと呼ばれる11番、12番、13番をはじめ、多くのホールに、積極か、安全かの、二者択一を判断するルートが設定されているのは、こうしたリンクス再発見の流れがあるからです。
 さらにその流れを汲み、リンクス再発見を継承しているのが富里ゴルフ倶楽部、カレドニアン・ゴルフクラブを設計したJ・マイケル・ポーレットです。彼はこう言っています。
 「2つのコースに共通することは、些細なうち損じでも厳しく罰せられる選択の出来ないホールではなく、グリーンまでにいくつかの攻め方が可能であるホールを設計したということです。これによって、明らかにゴルフの魅力は増すと思います。ただ、ここで誤解していただきたくないのは、設計者は自分の理念をしっかり確立していますが、その考え方や流儀を無理やりあてはめようとはしません。理念は先に立つものではなく、根本に流れるものです。まずはじめに土地があって、その土地にあったコースを作るというのが第一です。


サイプレス・ポイント16番ホール PAR3


 戦略型コース設計理論では、コースの全長は6700〜6800ヤードが基本であり、ただ長く飛ばせればいいというものではありません。自然の地形をいかに利用し、いかにエキサイティングなコースを作るか、が設計者としての腕の見せ所となります。
 「通常、日本のゴルフ用地の場合、非常に勾配が激しく、工事が難しいばかりでなく、多くの土地を削らなければならない。そのために、お金と時間が莫大にかかるうえに、自然を破壊した人工的なゴルフコースをよく見うけます。2つのコースはその点で地形はもちろん、全体のゆるやかな起伏、大きく美しい樹木、豊かな土壌、すべての条件が優れていました。」
 そこで、J・マイケル・ポーレットがこの自然にどんなホールを想像したか、二つばかり紹介してみましょう。
 例えば、カレドニアン・ゴルフクラブの5番ホール、175ヤード、Par3。水がプレーラインに絡むレイアウトを設計用語で「ウォーター・カムズ・イン・プレー」といいますが、その典型的なホール。横に長いグリーンが右へ行くほどティから遠くなる。つまり、グリーンを少し斜めにセットしてあるのがミソ。だからピンが右寄りに立つほど難しくなります。
 富里ゴルフ倶楽部の7番ホール、169ヤード、Par3。世界一美しいパー3と呼ばれる「サイプレスポイント」15番ホールをアレンジした名物ホール。太平洋の波は寄せてきませんが、少しでも風のある場合は、ティショットに神経を使います。ティから多少打ち下ろしになる高低差が絶妙で、グリーンの形やピンの位置が明確に見え、手前の岩と水が余計にプレッシャーを生みます。
 様々に変化し、先週と今週では攻め方がまるで違うといわれる戦略型の2つのコース、開場10年ぐらいではまだまだ、その面白さは分かりません。

 ・グリーンは別世界
 ・ピンの位置によって千変万化の攻略法

 スコットランド指向の戦略的なグリーンは、単なる円形でなく、また決して平らでもありません。ポイントは自然環境にマッチしたものだということです。例えば、あるグリーンのまわりの地形が非常に起伏に富んでいて、厳しいものであれば、グリーンも起伏に富んだものに設計されています。全体がやや窪地にグリーンがある場合は、窪地の印象を引き継いだ静かな形と起伏のグリーンに設計します。それと変化の多いグリーンでは、ピンポジションを毎日移すことによって、いろいろな攻略法が生まれます。少なくとも4ヶ所以上のピンポジションが設定できるように設計されているので、ティマークの置き方によって多様で興味の尽きないホールが現出されるのです。



(2000年1月 TAM ARTE QUAM MARTE誌 27より抜粋)

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